残り40試合を切り、プレーオフ争いが激しさを増しているメジャーリーグ。
そんなメジャーリーグの元選手を主人公にした、
ハードボイルド小説が、リチャード・ローゼン作、
『ストライク・スリーで殺される』だ。
これまでになかったキャラクターを主人公にしたこの作品は、
発表と同時に話題を呼び、1985年度アメリカ探偵クラブ、
最優秀処女長編賞を受賞し、シリーズ化されることになる。
野球を舞台にした小説の多くは、ピッチャーが主人公だが、
本書の主人公のポジションは、センターだ。
30歳を過ぎ、名門球団から新設チームの支配下選手となった、
主人公の身に大事件が勃発する。
試合前のロッカールームで大金とともに、
リリーフエースの他殺体が発見されたのだ。
事件に首を突っ込む主人公のもとに、
「次はお前だ」との脅迫状が届く――
といった、普通なら珍しくない内容なのだが、
それまであまり知られていなかった、メジャーリーグの、
ロッカールームの様子などが、とても新鮮だ。
加えて、主人公の女好きで適当な感覚が、
作品の雰囲気にマッチしている。
派手な展開は少なく、どちらかというと地味ではあるが、
日頃弱小チームを応援している人にとっては、
身につまされる話満載で、楽しめるつくりになっている。
この後メジャーリーグを引退した主人公は、
私立探偵になりシリーズは続くのだが、いずれも第一作には及ばない。
普段ミステリーを読まない野球ファンにも、お勧めの一冊だ。