2020東京五輪に向け、各競技の強化が始まっているが、
日本人がボート競技に初めて参加したのは、
1928年アムステルダム大会という、
古い歴史を持つことは、意外と知られていない。
1984ロス五輪・2000シドニー五輪と、
2回の入賞を果たしている日本ボート界だが、
国民的にボート競技に対する認知を広げたのは、
映画・ドラマ化された敷村良子作、
『がんばっていきまっしょい』だろう。
第4回坊っちゃん文学賞を受賞したこの作品は、
1998年に、田中麗奈のデビュー作として映画化され、
異例のロングラン上映を記録した。
舞台は70年代の愛媛県。
進学校にやっと入った主人公は、女子ボート部を設立し、
初心者ばかりの仲間を集め、青春をボートに捧げる。
誰もが自分の居場所が欲しいと願い、それを見つけた瞬間、
青春のエネルギーのすべてを注ぐ、高校生ならではの魅力が、
瑞々しいまでに描かれている。
授業風景や学校伝統の行事など、
その時代をその土地で過ごした人間ならではの、
描写の数々が印象深い。
タイトルにもなっている、”がんばっていきまっしょい”とは、
体育や朝礼の時に発する、”伝統の掛け声”のことだ。
最近は、小説やドラマも、地方を舞台にした作品が多くなっているが、
その流れを推し進めた作品でもある。
練習に打ち込む4人のボートが、
流れる様に水面を滑って行く場面の描写は、特に秀逸だ。
映画やドラマと合わせ、夏の季節にもってこいの一冊と言える。
2020東京五輪で、ボート競技が再び入賞・メダルに近付くことを期待したい。